“クジラの歌のようだ(日常ーα)” 制作記念、長い付き合いの二人、これまでとこれからについて対談の模様です。
■佐々木幸喜
秋田県出身。上京後、役者として芝居や声優の仕事を経験。その後、音楽活動へと転身。学生時代から親交のあったメンバーらとのバンド“LEMONs”の他、多くのサポートライブを行う。アップライトベースを使用することも多く、今回の「クジラの歌のようだ(日常-α)」では初めて弓弾きに挑戦する様子が収録された。
https://twitter.com/#!/sasaki_koki
■satohyoh
秋田県出身。不定型バンド『ukishizumi』で音楽会を企画。OMAGATOKI制作のジョン・レノン・トリビュートアルバム「#9 DREAM」、インディーズレーベル「clear」の東日本大震災チャリティー配信アルバム「one for all, all for one」、インディーズレーベル「T RUST OVER 30 recordigs」の「Free Compilation Vol.1」などに参加。
“芝居が2時間かけてやることを、音楽は3分~5分の中に詰め込むから、それが面白い”
佐藤 まずは出会った頃の話をしようかと思うんだけど、学校は違ったけど、高校生のときだね。どんな学生生活だったの?
佐々木 演劇部にいたんだけど、そればっかり。ちょうどこの季節は文化祭だけど、うちはいつも文化祭で2年生公演と3年生公演というのがあって。2年生はその後に大会があるから、その演目を体育館でやる。3年生は視聴覚室でやって、それで引退だった。
佐藤 たしか東北大会で賞とかとってたよね?
佐々木 優秀賞だけどね。最優秀賞は全国大会に行けるんだけど、その下の、3校くらいの賞。
佐藤 たまにNHKで放送されてるよね、高校の演劇。あれ見るの好きだったな。
佐々木 そうそう、全国大会の最優秀賞と優秀賞が放送される。
佐藤 今でもいっこ覚えてるけど、「7人の部長」だっけ?面白かったな。某映画のパロディ。
佐々木 「7人の部長」は未だに、高校演劇では1年生に練習でやらせるくらい、設定もしっかりしてるしわかりやすいし、キャラ作りを完全にベクトル振り切らないとできないから、いい台本だね。演劇もね、すでにある台本を使うか、自分たちで作るか、それでも色々変わるんだけど。オリジナルの新曲やるか、カヴァーをやるかみたいな。
佐藤 無理に音楽に例えなくていいよ(笑)。
佐々木 でも本当に、カヴァーバンドじゃなくて、オリジナルやるバンドの方が評価高いじゃん?でもうちの先輩たちの代で、あえて既存の台本でやって、それで東北大会いったの。それって結構すごいことなんだけど。怪談を作る話でね、暗いけど面白いんだよ。
佐藤 幸喜くんとお芝居や舞台を見に行くと、終わった後に詳しく解説してくれるから楽しい。幸喜くんは実際に上京して役者の仕事をしていたわけだけど、志したきっかけなんだったの?
佐々木 あまり覚えてないけど、ガンダムとか、アニメ好きだったのはあるかな。中学のときには志してた気がするね。演劇部が強い学校ってことで高校も選んで。そういえば、ついに芝居やってた年月より、音楽やってる年月が長くなったね。ついに。
佐藤 前に、芝居が2時間かけてやることを、音楽は3分~5分の中に詰め込むから、それが面白いって言ってたけど。それからまた何年か続けて、何か変わった?
佐々木 そこは変わってないかなぁ。今やってるバンドは歌詞に言葉遊びとかが多いから、当てはまらないかもしれないけど、例えば“rabuka”とか、最近手伝ってる人の歌詞はストーリー仕立てのものが多いからよく思うね。起承転結があるから、特にわかりやすく、一本の芝居と同じ。でもそう考えると、これまで何度も方向転換したなぁ。
“芝居に例えると、今は客演(サポート)が多くなってきてるけど・・・すげぇ楽しい”
佐藤 その変化の中に、アップライトベースを弾くようになったことも大きな転換だと思うけど、アップライト弾いてる姿も様になってきたよね。
佐々木 たぶんね、エレキベースの時は、エンターティナーという意識で演奏してるかもしれない。3人や4人だと自分の魅せる責任も大きいしね。サポートはアップライトが多いし、演奏で手一杯。たまに足上げたりしちゃうけど。
佐藤 足あげるね、確かに。あれは癖かな。
佐々木 ライブの時の癖って、やっぱり好きなアーティストの影響があるね。この間、映像見てて思った。癖じゃないけど、本番前に絶対やっておくこともあるよね。タバコ吸うのと、あと機材を磨くこと。ライブ見に行って、指紋べたべたのベースに照明当たったりすると、うわって思っちゃうから。見栄え悪いから、絶対にボディ拭いてからじゃないと、嫌だね。 なんか癖ある?
佐藤 うーん、卑屈なMC・・?
佐々木 笑。オレは自分で曲を作らないから、わからないんだけど、自分が作詞作曲した曲をメンバーが演奏してくれて、それをお客さんに見せるって、すごいことだよなって改めて思う。映画とか芝居でいったら、作・演出・主演なわけじゃない?
佐藤 主演は自分じゃなくてもいいけどね。誰かに歌ってもらうのも好きだし。そういうときは、作・演出で、自分もちょっと出演しちゃうみたいな気持ちかな。
佐々木 羨ましい気はするけど、やりたいかっていうと、やりたくねえ(笑)。ある意味怖いじゃん。全部自分のせいでしょ。ライブ中にそんな恐怖を味わいたくない。
佐藤 そこは生粋の「演者」だよね。芝居に例え続けるなら、今は自分の母体となるバンドを持ちつつ、客演をたくさんしている感じだけど、どう?
佐々木 すげぇ楽しい。歌はやっぱり人それぞれ違うしね。最近は“rabuka”とのライブが近いからスタジオ入ってるけど、ボーカルのゆめんさんは、たまにゾッとするくらい歌が上手いね。ピッチの良さが半端じゃない。
佐藤 あの人は普通にしてて個性ある人だから、歌も狙ってないのに独特で、それがすごいよね。もちろん本人は色々考えてるとは思うけど、自然に歌ってるようにしか見えないし、でも聴けばすぐ誰の歌かわかる。
佐々木 たぶんあの子は天才だよ。ただね、超バカだよ(笑)。最初会ったときはしっかりしたお姉さんタイプだと思ったのに、仲良くなったら愛すべきバカだった。良く言えばほっとけないタイプだよね。ももりょうは歌えるドラマーだから、ボーカルに対してレスポンスが速い。いい経験させてもらってるよ。
“ 高3の12月かな、ライブしたの。まぁ、そのせいで今に至るよね”
佐々木 高校のときの話に戻るけど、今やってるバンドのメンバーと初めて話したの、高3の8月だった。スイカ運びのバイトで会って。夏に地元のイベントがあって、急遽手伝いに行ったり、それで仲良くなった。
佐藤 その隣の隣町くらいで、うちらも高校生で集まってライブとかしてたな。あの頃はまわりにバンドやってる人が少ないから、すぐ仲良くなったよね。バンドの掛け持ちも多かったし。大人の人たちがみんないい人でね。楽器屋さんとか、機材貸しの人とか。喫茶店の人とかね。大人に混ざってライブして、楽しかったな。
佐々木 そういうイベントでライブすることになって、カラオケに行って、この曲やろうとか話して。
佐藤 なんかいいね。青春っぽいよ。
佐々木 それであれだ、あの、今は無くなっちゃったレンタル店○○○でCD借りて帰ってさ。
佐藤 懐かしい!今思えばお互いの家の中間点くらいだよね、その店。あの頃にもっと会ってたら、たぶんあの辺で遊んでたんだろうな。
佐々木 だね。そんな8月を過ごして、それで9月に、何日か東京に来たんだよね。いろんな舞台を見漁って。その時携帯電話なくしちゃってさ。帰ったら母親に、友達から電話あったよって言われて。それが、一緒にバンドやろうっていうお誘いだったね。12月かな、ライブしたの。まぁ、そのせいで今に至るよね。役者期があるけど、今ではまた同じメンバーでバンドしてるし。
佐藤 その次の年かな、もう卒業直前に、喫茶店みたいなとこと、公民館でライブしてたよね。その喫茶店では、大勢の女の子に囲まれてる幸喜くんを見て、なんだこいつと思った(笑)。公民館の方は進路決まってる人で即席のバンド組んで出演して、その時初めて幸喜くんと話したね。入口のところで。あの時のモテモテくんだーって思いながら。
佐々木 そうそう、他校の女子がたくさん来てくれて。
佐藤 ステージの君側の方にだけ、女子のみなさまがね。
佐々木 ええ。まぁ、思えば短い栄光でしたね。
佐藤 そんなこともないだろう(笑)。ちょっと自分の話になるけど、高3のとき、初めてレコーディングして、デモテープ作ってたんだよね。秋田県南のバンドでコンピレーションを作ろうっていう企画があって、地元のCDショップさんが頑張ってたんだよね。それに1曲参加して。某ホールに機材持ち込んでマイク立てて、店長さんとイベンターさんが録音編集してくれて。そのときに曲多めに演奏して、それをデモテープにしたんだった。メンバーのお姉さんがデザインの仕事してたからジャケット描いてもらって。やってること、今とまったく変わってない。
佐々木 あったね!そういうの。聴きたいな。
佐藤 あのデモテープとコンピレーション、地元のCDショップに行けばまだあるかな。あったらあったで聴くの怖いけどね。
“HUMPBACK engineering製、超高解像度DI、「High Definition DI」”
佐々木 アップライトでサポート演奏することが増えて、求められる演奏がよりシビアになってきてるんだよね。いろんな場所に呼ばれて弾くわけだから、スタジオでも個人の練習でも、自分の弾き方でどういう音になっているのか、ちゃんと知っておかなきゃいけないと思う。そんなわけで、本日ご紹介するのは、こちらの商品なんですが・・・。HUMPBACK engineering製、超高解像度DI、「High Definition DI」。
佐藤 (・・・なんか始まったな。とりあえず乗っかろうか)。わぁ!思ったよりすごく小さいんですね!これは持ち運びには便利だし、何しろデザインもシンプルでかっこいい!!
佐々木 こちらはインプット、アウトプット、D.Iのアウトプット、グランドリフトのレバーだけしか付いてない、非常にシンプルなD.Iなんです。
佐藤 よくあるD.Iには、ツマミがいっぱいついてて、なんだかよくわからないですけど、こちら簡単で使いやすそうですね!
佐々木 元の音に忠実な、よりクリアな音をPA卓に送る、そんなD.Iが欲しいなら、そういうものは本当は必要ないですよ~。
佐藤 でもこれだけ小さくて、音もクリアで、中身もかなり凝って作られてたら、お値段の方が、やっぱりそれなりに高くなってしまうんじゃないですか?
佐々木 きっと同じクオリティのものを、メーカーに頼むとすると、まぁ、流通に乗せてしまうと10万円くらいしてしまいますよね~。
佐藤 ですよね~。でもやっぱりベーシストにとっては必需品ですし、様々な現場でも使うわけですから、いいものを持っていたいですし~。もう少しお値段抑えられたらいいですね~。
佐々木 そうなんです。実際にそれぐらいの値段するものですからね。ただ、今回、勉強させていただきました。HUMPBACK engineeringさんに頼むとぉ・・・・・円(お問い合わせください)。
二人 安ぅぅぅぅい!!!!
佐藤 あははは。博多華丸さんのネタじゃねぇか(笑)。しかも途中から二人とも北社長だし。
佐々木 お約束って大事よね。
佐藤 でもオーダー品だから本当にもっと高いかと思ってた。
佐々木 私、歩く広告塔ですから。たーさん(HUMPBACK engineering製作者)にギャラ貰わなきゃ。笑。ただ、本当にいいからね。このD.Iは。しかも中に使ってる部品がもう手に入らないらしくて、同じものはもう何台かしか作れないらしい。欲しい方はお早めに。
機材の試聴
http://soundcloud.com/takahiro-toda/humpback-engineering-hddi-demo
製作者のTwitter
https://twitter.com/#!/tar_wjaz
HUMPBACK engineering
http://humpback-eng.seesaa.net/
デモ機はこちらにあります。西荻窪w.jaz
“どうしてたって、何かすれば幸せがあるし、常に別の道の幸せもあるし、得るものもそれぞれ違ってあるし、いいんじゃない?この先もそれで”
佐藤 そろそろ最後になりますが、10年後って何してると思う?
佐々木 10年前に今みたいな自分を想像はできてないだろうし、何度も方向転換したしね、先の10年なんかわからん。それこそ音楽とか、バンドとか、かたちには拘ってないかもしれないし。何かで大儲けしてるかもしれないし。どんなきっかけでダメになるかわからないし。
佐藤 音楽には携わっていたい?
佐々木 絶対に音楽やってるかなんて誰にもわからない。でも、相変わらず音楽に対してあーだこーだしゃべって、今日みたいにお酒飲んでると思うよ。
佐藤 幸喜くんは常に新しい事に挑戦している人だから、本当に10年先にどうなっているのか、わからない人だと思うよ。そんな新しい挑戦のひとつが、弓弾きだよね。「クジラの歌のようだ(日常-α)」では、本当に初めたばかりの一生懸命音を出してる様子を録音させてもらいました。
佐々木 今の方があの録音の時より全然音でる。もっと言えば、次のスタジオ、次の日、録音した数時間後、やればやっただけ上手くなってるはずなんだよね。だからまだそんなに弾けないのに録音するって、改めて考えたら特殊なことだと思う。さすがにさ、始めて10日くらいでさ。罰ゲームかと思ったけど、始めてすぐのこの高揚した感じを残せたのは、良かった。
佐藤 行動力はすごいと思うよ。いつの間にか宅録機材そろえてたしね。
佐々木 オレすぐ機材買うじゃん。オーダーもするし。この間、「なんで経済的に裕福なわけじゃないのにそんなにすぐ買うの?」って聞かれたんだけど、それで思ったのは、やりたいことが、ものがなくて挑戦できないっていうのがすっごい嫌だからかもしれない。技術的なことで出来ないは練習すればいいし、ただ、やりたいのにものがないってあきらめるのが嫌なの。だからみなさんも・・・。あきらめないで!!(真矢ミキの物まね)
佐藤 笑。でもそれは自分へのプレッシャーを常にかけ続けてることになるよね。それももしかしたら、物欲というより、向上心の結果なのかもしれない。ふと思ったけど。
佐々木 そう、お前これで後戻りできないぞ、練習しろよ、っていうね。またHUMPBACK engineeringのD.Iの話になっちゃうけど、クリアな分、ミスしたら目立つ。でもちゃんとベースを鳴らせば、その機材の最高の音が出せるっていう、そういうものなのね。これを早くちゃんと使えるようになりたいね。ほら、バスケの3Pが本番に限って入らないと、悔しいじゃん?
佐藤 その例えちょっとわからないけど・・。ちょっとね、お酒が効いてますね。でも自分の場合は、ガットギター使い始めたときがそうかも。アコギなら弾けるフレーズが、ガットだと鳴らせてなくてもどかしい。でもすごく性に合ってる気がする。自然な気がする。
佐々木 手の大きさとか、握力とか、人それぞれ合う機材や方法があると思うのね。ただ、エレキベースを弾くときマイナスに感じてたことが、アップライトベースではそれが良かったりするし。逆もあるけど。マイナスをプラスにするチャンスはいくらでもあるんだよ、やっぱり。
佐藤 まぁ結局のところ、昔と今を比べたら、こうだって振り切ってやってきたこともあるし、逃げ出したこともあるし、なんだかんだその時その時にたくさん選択して今があるけど、得たものの方が多い気はするね。
佐々木 この数年にしてもさ、音楽辞めてたかもしれない出来事はたくさんあったけど、こうしてアップライト始めたり、弓弾きになってみたり、気がついたら依頼されてサポート演奏とかしちゃってる。単純に続けたからもあるし、出会いもあるし。どんなことでも続けていければ、芽が出なくたって得るものはあるしね。続けるだけじゃなくて、新しいことに挑戦してこなければ、今よりダメになっていたと思うし。
佐藤 幸せと思えれば幸せだし、不幸と思うことが不幸なのかね。
佐々木 バンドでオレぐらいの境遇の人なんてたくさんいるだろうけど、サポートの依頼を貰うようになった分、恵まれている方だと思う。同世代でもう辞めちゃった人もいるじゃん。オレより才能あるのにさ。芽吹くかどうかは別として、何かを続けていくのはいいことだと思うよ。音楽なんかやらなくても、幸せになれるし、音楽やればそれでしか味わえない幸せがあるし。どうしてたって、何かすれば幸せがあるし、常に別の道の幸せもあるし、得るものもそれぞれ違ってあるし、いいんじゃない?この先もそれで。